さらば日本人~スーパーカブ世界1周記~

ママチャリで日本一周してました。バイクに乗って世界一周をします。その他諸々の旅日記

賀曽利隆さんに会う

 

 

賀曽利さんに会いに行こう

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神奈川まで会いに向かった。

 

 

賀曽利さんのことを初めて知ったのはまだ2ヶ月前の10月初旬。

 

バイクで海外を走りたいと思い立ったのが今年の9月になったかどうかの頃だったので、その時バイクで海外を走った第一人者的な人は誰だろうと調べて、見つけたのが賀曽利隆さんだった。

 

 

プロフィールを見て、「話したらきっと楽しいだろうな」と思った。実は私はまだバイクを手に入れてないので、正直バイクの専門知識を聞いてもよくわからない。海外の知識も無いに等しい。でも、動画の中で話されている姿を見て、世界中を駆け巡ってきた人の人間性に触れてみたい!という興味に駆られた。

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氏の記事

 

 

そして先日、お時間を割いて頂き、伊勢原市の自宅にてお話を聞かせてもらった。お部屋は書斎といった感じで、当時の旅の日記やメモ帳、フィルムのままの写真、旅関係の書籍、ご家族の写真が所狭しと並んでいた。ガレージには、氏の愛車のvストローム250が佇んでいた。

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旅の具体的な話

で、旅の具体的な話を色々ざっくばらんに聞いてみた。

 

  1. マダガスカルの話
  2. オーストリアについて
  3. 赤道の話
  4. 地図について
  5. サハラ砂漠について
  6. 強盗にあった時の対応

 

気になっている事から無造作に聞いていったので、ほとんど話に関連性がない汗

まず1のマダガスカルについて。

氏は2012年ごろ、マダガスカルを走っている。最近、食料飢饉が騒がれているマダガスカルだが、当時は別に食料は困って無かったと。

マダガスカル 子どもの急性栄養不良4倍に増加 4年続く干ばつで飢饉間近

 

当時よく食べていたのは、「パンとサラダ」だったそう。なんでも、マダガスカルはフランス領だった為、フランスの食文化が影響を及ぼしているとのこと。気候は安定しており、現地の人々も温和な人が多かったと言っていた。幹線を外れると、未舗装の道だらけで、島全体の雰囲気は文明から取り残された未開の時代を感じたと言っていた。

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赤い線の幹線以外は、ダート道ばかり

 

2のオーストラリアは、ワーホリで行った方はきっと知っているんだろうけど、水資源が不足しているらしい。地図上で見ると、湖はチラホラあるが、どれも塩湖ばかりだとか。

だから砂漠エリアも多く、氏曰く「水さえ出ればもっと他国から評価される国」とのこと。

【10時から16時の庭の水やり禁止】シドニーで罰金付き水の使用制限はじまる(森さやか) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

 

3の赤道については、これも地理のお勉強では当たり前なのかも知れないが、赤道直下と言えども気候は必ずしも暑いわけではないとのこと。これは高低差や、乾気や湿気も絡んでくるので、例えば同じ暑い土地でも、サハラのように乾いていて風呂に入らずともベタつかない土地もあれば、南米の密林は逆に汗をかいて水を浴びないと不快で居られないということ。

 

 

4の地図は、ミシュランの地図を一押しされた笑。

英語表記だが、アフリカ大陸を3枚に分けて記していたり、時期による雨季の表もあった(アフリカは、雨季によって道に川が発生し、川の水が引くまで走行が不可になるエリアもあるそうだ。スーダンエチオピア辺りだったかも知れない)。

現代ではGoogleマップという大変便利なツールがあるが、紙の地図にはデジタル地図にはない、イメージを駆り立てる魅力があると氏。

紙の地図と睨めっこしながらルートを練っていると、その地形や街のポイントから、いろんな発想が湧いてくるのだとか。そこから今まで思いつかなかった新しい旅の計画を思いついたことが何度もあったそうだ。

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これには膝を打った。ケータイが壊れることも想定して、紙の地図は必要だとは思っていたが、紙の地図はいろいろな発想を生み出してくれるのだ。確かに、デジタルの地図では目的地までの距離や現在の居場所、周辺の施設など瞬時に分かるが、画面が小さく、長時間見続けるのはなかなか辛い。必要な情報だけ受け取れば、それ以上は見る必要が無いため、旅が狭まってしまうのだろう。

 

 

5のサハラ砂漠では、氏は縦断はした事はあるが、横断はしたことないし、バイクで横断した人間はまだ聞いたことがないとのこと。縦断の時は、1ヶ月くらいかかったらしい。途中の水分、食料補給は、所々で出てくるオアシスで補給したとのこと。

過去にサハラ横断に挑戦した、上温湯隆さんという方が居たが、残念ながら旅路の途中で渇死されている。その際の出来事の記録も出版されている。

旅の中でもダントツに難易度の高いサハラ砂漠縦断、横断だが、更に追い討ちをかけるかの如く、現在は国境の関係もあって入ること自体かなり難しいらしい。

(ちなみに賀曽利さんは特にサハラに強い思い入れがある。決められた道に縛られない、あの風景が好きだと)

 

 

最後に6の強盗について。強盗にあっても、下手に抵抗しないのがやはり鉄則とのこと。

むしろ「兄ちゃん何欲しいの?何でも好きなの持っていきなよ〜笑」と言えるくらい腹括って行った方が、本当に強盗にあった時メンタル的に(その後に起こる出来事も)色々違ってくるそうな。

 

 

賀曽利さんの人間性

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直接書いて頂いた、通過難易度の高い国境

 

 

  • 世の中に悪い人は1人もいないよ

話している中で、世界中周ってみたけど悪い人は1人もいない!という言葉は深かった。もちろん氏は旅中ボラれたり、窃盗に遭ったり色々大変な目にあっているが、それでもなぜこう言い切れるのか。

「誰しも、いい面があるのと同時に、悪い面もあるもの。僕と会った時は、終始僕に迷惑をかけてきた人も、僕の知らないところでは誰かに優しくしているかもしれない。物を取られたこともあるけど、そのお金でその人は誰かのお店で買い物してお店に貢献したり、自分の親兄弟に食料を分けているかもしれない。旅を続ける中で、物事をそうやって多面的に見れるようになった」

との事。

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ひき逃げにあっても、人を恨む事はしない

 

日本で生活していると、「世間には悪いヤツもいるから、騙されないよう気をつけなさい」とよく聞いてきたが、純粋に悪い人は居ないのかも知れない。いや、世界は広いので、実際はどうか分からない。海外では日本の比にならないくらいの凶悪犯罪(凶悪すぎてニュースに出てこないのもある)がゴロゴロあるが、きっとその人達は生きている過程で心が汚れてしまったのであって、生まれた時から悪の人は居ないだろう。少なくとも、そう信じていた方が、引き寄せの法則じゃ無いけど良い人に沢山出会えそうな気がした。

 

  • 受けた恩は忘れていいんだよ笑

旅をしていると、どうしても人様の世話になることがほとんどだ。それで旅に対して億劫な部分もあると話していると、「受けた恩は忘れて良いんだよ笑」と氏。一般人様に話すと絶対説教を受ける内容だ笑。

 「恩は返さなきゃいけないとか、そんな細かい事考えるよりも、今この瞬間を一生懸命生きたら良いよ。嫌いな事を嫌々やっていてはダメ。好きな事に一生懸命打ち込みなさい。そうしていれば、巡り巡って、自分の知らない所で誰かの役に立っているものだから。将来を不安に感じている人は多いけれども、今を一生懸命生きていれば自然と未来は開けてくるものだからと氏。

世間ではよく、「みんなが自分の好きな事ばかりすると世の中が回らなくなる」と言うが、私は意外とそうじゃ無いのではと思っていた。それに対しては氏も同意見で、「逆にもっと世の中の回りが良くなるはずだよ!」と賛同。きっとそっちの方が、もっとユニークなアイデアが湧くだろうし、人のそれぞれの才能が存分に発揮されるだろう。

 うまく説明するのが難しい内容だが、人は好きな事をやっていると、どうも血の巡りがよくなったり、元気になるらしい。氏も50代の時に心臓発作に見舞われたが、好きなバイクに再び乗った事により気づいたら治ってしまったのだとか(それ故にバイクは健康機器と氏は言っている笑)。

 人がもし地球の細胞のような存在だとすれば、人々が自分の楽しいと思える事にまっとう出来れば、きっと地球の血の巡りは凄くよくなり、地球のあらゆる環境、食料、紛争問題はあっという間になくなってしまうのではなかろうか。そんなオカルトチックなことを、話を聞きながら思いを馳せていた。

 



 

徳川家康の遺言で、有名な言葉がある。

人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。
不自由を常と思えば不足なし。こころに望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。
堪忍は無事長久の基、いかりは敵と思え。
勝つ事ばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる。
おのれを責めて人をせむるな。
及ばざるは過ぎたるよりまされり。

意味は

「人の一生というものは、重い荷を背負って遠い道を行くようなものだ。急いではいけない。
 不自由が当たり前と考えれば、不満は生じない。
 心に欲が起きたときには、苦しかった時を思い出すことだ。
 がまんすることが無事に長く安らかでいられる基礎で、「怒り」は敵と思いなさい。
 勝つことばかり知って、負けを知らないことは危険である。
 自分の行動について反省し、人の責任を攻めてはいけない。
 足りないほうが、やり過ぎてしまっているよりは優れている」

というものらしい

引用先

www.edu-konan.jp/ishibe-jh/ikiruhint/tokugawa.html

 

この言葉を例に出し、氏は「シモツカさんは、障害があるから、逆に有利だよ〜。不満を持たない事に対して、普通の人より近道を進めるよ笑」と言ってくれた。

さすが戦乱の世を治めた人間の言葉というべきか、何となくわかる言葉でもあるが、様々な経験を積まないと深い意味は分からない言葉でもある。

持論だが、私は障害や何かを失う事は意外とマイナス要因ではないのでは無いかと思っている。というのは、その状況に陥れば、そうなった状況下でしか学べない事、出会えない人、自分の姿があると言う事だ。

 私は過去に日本一周をした際、ママチャリという旅には不向きな自転車を選んだ。しかしあの速度だからタイミングよく出会えた人が居たし、あの不自由さだから助けを乞うて人間関係を築いた人が居る。また私自身障害者であるから、他障害者の方にも共通意識を持ってもらいやすい(賀曽利さん自身も、今年の5月末にひき逃げ事故に遭われ、左手が一時的に不自由だったと話していた)。

人生には様々な障壁がある。病気、事故、障害、借金、老い、人間関係などなど。人はどうしても物事の表面ばかり見がちなので、こういった困難に見舞われると肩を落とし、深くため息をつく。しかしこれらは果たして悪い事ばかりなのだろうか。

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我が左手。意外と使い勝手が良い笑

 

 病気になれば、人は今までの生活習慣や心の姿勢を改める機会を授けられ、同じ病気に陥った人の支えになることができる。そうなれば、日常の中に埋もれた当たり前の有り難みを噛み締めたり、新たな人間関係を築けるのではなかろうか。

 老いに対しても、表面状は体力、気力が落ちると言う問題があるが、それは裏を返せば「身の回りの小さな物事に気づけると」言うことでもある。賀曽利さんは、御年74歳。自身はまだまだ現役のバリバリであるが(自分で『不死身の賀曽利』と言うほど笑)、60歳を超えた際は一度気持ちが落ち込んだと言っていた。しかし氏は若い頃は世界中を、中年期からは日本を周るようになり、ちょっとした地名の違いや、その土地柄の料理など、より小さなものに目を向けるようになったという。一緒に近所を散策させて頂いた際も「ここに神戸ってバス停があるでしょ?これは『ごうど』と読むんですよ。で、神戸って地名は読み方は違えど他にも各地にあるんですよ」と楽しそうに話して下さった。上記で述べた家康の遺言も、歳を重ねるとまた新たな意味が理解できるのかも知れない。こう聞くと、まるで漫画のガッシュベルみたいに、だんだん経験を重ねるごとに読めるページが増えるみたいで面白く感じませんか?笑

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賀曽利邸の近くのバス停

 

 

  • 好きな事を貫くと、周りの為にもなる

 賀曽利さんにお会いした事のある方ならわかると思うが、氏は凄く人当たりがいいと言うか、誰に対しても丁寧な方だった(お店の店員さんにもとても丁寧だった)。おまけに茶目っ気もある。何と言うか、またもう一度会いたいと相手に思わせる人柄だ。私は旅に対して、今まで「道楽の一環」と捉えていたが、それだけでは決してないということが、氏と会ってみて凄く実感した。

それはきっと、氏が自分の好きな旅を一生懸命続けてきたからだと思う。山登りの旅仲間が以前教えてくれた言葉だが、「登りたい山に向かう時に、登りたく無い山を越えないとその目的の山の麓まで向かえない場合がある」と言っていた。賀曽利さんは、現在バイク雑誌、マップ情報誌のフリーライターとしてもご活躍されているが、ある時は夜中の0時まで編集し、朝3、4時過ぎには宿を出発するときもあったという。20歳にアフリカを出る前も、週7日の20時間労働を続け(ブラック企業も真っ青笑)、大学新卒の初任給が3万円の時代に2年がかりで100万円貯めたという。家庭を持ってからも旅を続けていると、世間様に説教を受ける時もあったという。

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旅を続ける中で見えない苦労もされていた

 

 好きな事を続けているつもりでも、その途中で思わぬ苦労を味わったり、冷や飯を食わされる時がある。そんな中、様々な思いに苛まれたり、現在の状況や過去を恨めしく思う時があるが、それが同時に、本人に新しい視点を持たせてくれたり、他人の苦労を分かち合える器の広さを築かせてくれるのかもしれない。自分が楽しいと思う事、夢中になれる事に、直向きに取り組めば、自ずと未来は開け、人間性も磨かれるという事を氏を通して改めて確信させて頂いた。

 

 

まとめ

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ご自宅の書斎にて。とてもパワフルでサービス精神旺盛な方でした!

 

鉄人ライダー賀曽利さん。1人のライダーという以上に、1人の人間として凄く魅力的な方でした。自分から積極的に支援を募ったりはしない方だが、それでも多くの人が氏を応援、サポートするのには氏の人間性が大きく影響しているのだなと凄く感じました。そして旅には、氏のような大きな人間性を育む可能性があるのだと、新たな気づきがありました。是非またお会いしたい人物です。

最後に、氏の名著『アフリカよ』を載せておきます。

アフリカよ 1968-69 [電子書籍新版]

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  • 作者:賀曽利 隆
  • ヤブ式怪社ヘンテコ・インターナショナル
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